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| 料理の世界に入ってからずっとこれまでイタリアンを専門にしてやって来られたという鍋谷則之新料理長に、これまでのこと、今後の意気込みを中心に伺いました。 |
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Q. ずっとイタリア料理を専門にやって来られたということですが、これまでの経歴について、簡単に教えて頂けますか?
はい、僕はいま40代前半なのですが、料理で身を立てると決めた19の頃から、最初からイタリア料理の店に修業に入りました。途中にフレンチも少しかじったこともありましたが、基本的にはイタリアン1本です。
実は、そういったケースはシェフの中では珍しいんです。その当時は、イタリアンが流行っているのもあり、フレンチからイタリアンに鞍替えするシェフが結構いたのですが、僕の場合はその逆。ずっと最初からイタリアンでした。
Q. 19というと、調理師学校を出られた頃?
いや、実は僕、学校は出ていないんです。
社会に出てから1年間はデザイン関係の仕事でサラリーマンをしていまして。
芸術や絵画に非常に興味があったのですが、「絵の仕事」というのはあまりなかったもので、少しでもそれらに関われるもの、ということでデザイン・印刷など、出版関係の仕事に就きました。営業もやりましたし、航空写真のカメラマンの補佐など…なんでもやりました。
Q. 調理師学校に行っていない…それは、ちょっとびっくりです。そうすると、料理の世界には、どういった理由で入られたのですか?
絵が好きだと言いましたが、そういった絵画関係の本なんかを見ていると、ダヴィンチなど、なんでもそうなんですが、いたるところで「料理」と結びついて、イタリアの食文化が必ず紹介されているんです。
例えば、「カルパッチョ」という料理がありますが、これは画家の名前なんですよ。
Q. え!?そうなんですか。
カルパッチョの絵は、いつも「赤色」が多く目立っていたんです。
あるとき、とあるコックが、ご主人様に「ヘルシーな肉料理を考えろ」といわれ、頭を巡らしました。肉料理でヘルシーなもの…ということで、脂身がない生肉を使って、そこに塩胡椒・レモン・オイル、チーズをかけてサラダにしたら、いたくご主人さまのお気に召したんですね。
そのときに、「この料理名は何だ?」ときかれ、特に名前を決めていなかったコックは、たまたまその部屋に飾ってあったカルパッチョの赤い絵を見て、似ていたので、とっさに「カルパッチョです」と言いました。それが『カルパッチョ』の名前の所以、という説があります。
Q. へえ!初めて知りました。面白いですね。
ええ。そういった文化の部分から、料理は面白い!と興味を持ちまして。
Q. お料理じたいもお好きだったのですか?
そうですね、父親が板前をしていた他、食につながりのある家系だったもので、そういった意味でも、食や料理には自然に興味がありました。
そして19のとき、「自分はイタリアの文化、イタリア料理で、身を立てていきたい!」と決断しました。調理師学校に通うことも考えたのですが、イタリア料理を知るには、田舎の新潟には2〜3件のスパゲッティー屋しかなかったので、上京して、イタリア料理メインキッチンのホテルに入りました。
Q. なるほど、そうなると全くゼロからのスタートですよね。不安はなかったんですか?
うーんそうですね、東京に出たときは、持ち物はちょっとした服と、包丁2本だけ。本当に何もなかったです(笑)でも、どうなるかわからない状況でしたけども、迷いはなかったですね。迷いよりは、「なんとかなる!」「早くイタリア料理が覚えたい!」その気持ちが強かったです。厳しい世界ではありましたけど、その思いでずっとやってきました。
Q. 鍋谷さんは、とても穏やかそうでおっとり見えますけど、お話を伺うと、とても情熱的な方なんですね。
そうですかね?ともかく、修行に入った当時は、特に必死でした。
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Q. イタリアンをずっとやってきたということですが、鍋谷さんの考える、イタリアンならではの魅力をお聞かせ願えますか?
お料理の表現といったときに、素材の味を本当にそのまま生かして出せる、ということでしょうか。勿論、フレンチにしても中華にしても、「素材を生かす」という発想は共通なんですが、「生かし方」に違いがあります。
Q. 具体的に、どんな違いがあるんでしょうか。
そうですね、例えば、イタリアンでも、フレンチでも、日本料理でも、野菜の旨味を引き出すといえば、「水を抜く」ということがポイントです。その中で、いかに上手く水を抜くか、というところに味わいのポイントがあります。イタリアンの場合は、さらにいえば、元々郷土料理がベースになっているのもありまして、その土地の素材―例えば、採れたての魚や、そこで育ったオリーブを絞ったオイル、ガーリック、唐辛子−などを、最大限に、シンプルに生かす、という特色があります。ある意味、すごく大雑把だし、素朴な料理といえます。
Q. 庶民的と言ったらいいんでしょうか。
ええ、そうですね、イタリア料理は毎日食べるものです。その土地の方々に根付いた料理、ということで、日本の環境とも相性が良いと思います。
Q. 日本も新鮮な良い食材に恵まれた土地柄で、あまり手を加えず「そのままの味を生かす」という文化がありますものね。
そうですね、素材をシンプルに扱って表現できる、という点ではとても共通点は多いですね。勿論、フレンチも同じですが、僕のベースはやはりイタリアンです。イタリアンをずっと取り組んできて、そこから生まれる発想、食の楽しさが好きです。
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Q. アルゾーニに入られたきっかけについて、お伺いできますか。
はい。コックとして身をたて、24のときには料理長も経験し、数年間はずっと東京でやってきたのですが、その後わけあって新潟に帰りました。家庭の事情で致し方なかったのですが、「思いを残して」という帰り方でした。
イタリアン1本で身を起こした僕だからこそ出来る、僕にしかできない仕事がある、それを、イタリアンの魅力を、もっともっとお客様に知ってもらいたい。ひいては、後に続く若い料理人たちにそういったお料理を伝えていきたい。そういった思いをずっと持っていたところで、この度、アルゾーニの料理長のお話を頂いたんです。
Q. 鍋谷さんだからこそわかるイタリアン魅力を、皆さんに広めたい、と…
はい。あとは、食自体に対する思いも、動機になりました。
一度東京から田舎に帰った際に、地元の野菜を食べて、改めて「ああ、地元の野菜って、本当に美味しいんだなあ」と感銘を受けまして。地産地消、という言葉は今ではだいぶ一般的になりましたが、その土地のものを食べるのは、本当に理にかなっているんだな、とそのとき心から思ったのです。
そこの土を踏み、風を感じ、匂いをかいで、そこの水で自分が育っているわけですから、その土地の野菜は、体にいいはずなんです。そしてその野菜を、さらに美味しく料理して、大切な人と食事をしたら、すごく幸せな時間ができるんじゃないか。
自分は、それの手助けがしたい、とずっと考えていました。
Q. アルゾーニは「フレッシュ、ナチュラル、ホームメイド〜あなたの大切な人と味わうスローフード」というコンセプト掲げていますが、お話を伺うにあたり、鍋谷さんが元々持っていらっしゃるベースの思いとぴったりですね!
そうですね。地場野菜なども想像した以上にとても美味しかったですし、僕の言うような、「土着の、その土地の」ものを、イタリアンで表現して、喜んでもらいたい…そういったスタイルが、ここなら可能なのでは、と思いました。素材の味を生かして、この喜びを皆さんに伝えていきたいと思っています。
また、なんといってもアルゾーニの大きい魅力に、手作りのモッツァレラチーズがあります。源乳を買ってきて、手をかけて、作りたてのチーズを召し上がっていただく…というのは、なかなか出来ないことです。この店の自慢のカラーですね。僕もまだまだ勉強することがたくさんあります。今まで以上にこれを生かして、お客様にアピールできればと思っています。
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Q. 料理人の方って、新しいものを考えるとき、どういう風に思考を巡らしているんですか?
そうですね…過去を振り返ると、一人で美術館や映画なんかを見に行ったり…
Q. 美術館、映画? お一人でいかれるんですか。
えぇ、絶対に一人です(笑)誰も誘わないで見に行って…これを創った作者は、一体何を考えていてこれを創ったんだろう、どうしてこんなカタチなんだろう…なんで、こんなひねくれたものを創るんだろう…色々なことを考えるんです。
Q. へぇ、ちょっと意外ですね。本などで勉強されたりはしますか?
う〜ん、本も読みますけど、どちらかというと、本も、めくるだけ、ですね。意味わかりますか? 本当に「見るだけ」なんです。ぱらぱらぱら…とめくって、このオレンジ色、綺麗だな。この色は、カメラマンの腕なのかな、それとも、素材によるところなのかな…この盛り付け、お皿、綺麗だな…この色、出したいな…そういう風にイメージで、読んでいくんですよ。とはいっても、内容も結果的に、興味のあるものはつきつめますけど。
Q. すごい!頭で考えるのではなくて、インスピレーションを得ているんですね。そのストックから、自分の新しい発想を生んでいく…正にアーティストじゃないですか!
いやいやそんな(苦笑)
僕はアナログ人間で、コンピューターなんかは正直苦手なんですが…そういったところで、常に感性を磨くようには心がけています。
Q. なるほど!素敵なお話をありがとうございました!最後に、新料理長として、お客様へのメッセージをいただけますでしょうか。
はい。
先ほども申し上げましたが、アルゾーニならではの、地元の素材をふんだんに使い、皆さんに喜んで頂けるようなものを、表現していきたいと思っています。ご来店頂いた皆様が、心地よいお時間を過ごしてもらえるように、メインシェフとして、熱意を持って頑張りますので、よろしくお願いいたします。
Q. 鍋谷さんならではの表現、期待してますね!
はい、これまで以上にイタリアの郷土料理の色を強く打ち出したお料理を皆さんにお楽しみ頂けるように、頑張ります!
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